自己効力感が高いと、何が変わるのか
自己効力感が高いと、成績や能力そのものが上がるわけではありません。変わるのは行動です。
バンデューラは、自己効力感が次の3つに影響すると述べています。
- どの課題を選ぶか…挑戦的な目標を選ぶか、失敗しない範囲にとどめるか
- どれだけ粘るか…うまくいかないときに方法を変えて続けるか、早くあきらめるか
- 失敗をどう受け止めるか…努力や方法の問題と捉えるか、能力の問題と捉えるか
この3つが積み重なった結果として、成果や健康状態に差が生まれます。効果は自己効力感から直接生じるのではなく、行動を経由して現れる——この順序を押さえておくと、後述する効果の理由が理解しやすくなります。
目標を達成しやすくなる
自己効力感が高い人は、達成できる見通しを持てるため、行動に移すまでが速くなります。さらに、途中でつまずいてもやり方を変えながら続ける傾向があります。
多くの目標は、一度で成功しないから達成できないのではなく、うまくいかない段階で手が止まるから達成できません。自己効力感は、この「止まりやすい地点」を越える力として働きます。
ストレスに強くなる
同じ出来事でも、「対処できる」と思えるかどうかでストレスの感じ方は変わります。対処できる見通しがあれば、その状況は脅威ではなく課題として認識されます。
自己効力感が低いと、困難な場面そのものよりも「自分には無理だ」という予測が先に立ち、不安が高まりやすくなります。
学び続けられる
新しいことを学ぶ過程では、必ずできない時期があります。自己効力感が高い人は、この時期を「まだできていないだけ」と捉えられるため、学習を続けられます。
逆に自己効力感が低いと、できない時期を「向いていない証拠」と解釈し、早い段階で手を引いてしまいます。
人との関わり方が変わる
自己効力感は、対人場面にも及びます。「伝えれば分かってもらえる」「相談すれば力を貸してもらえる」という見通しがあるかどうかで、行動が変わるためです。
見通しが持てないと、相談も交渉も起こりません。関係の質は、働きかけの量に左右されます。
健康行動が続きやすくなる
運動、食事、禁煙、服薬。健康に関わる行動は、知識があっても続きにくいという共通点があります。ここで効くのが「自分なら続けられる」という確信です。
この領域は研究の蓄積があり、健康行動の改善・維持、慢性疾患の管理、高齢者の健康維持との関係が報告されています。詳しくは自己効力感が健康に与える影響で、参照した研究とあわせて解説しています。
仕事の場面で現れる効果
組織のなかでは、自己効力感の差が次のような形で表れます。
- 手を挙げるかどうか…新しい役割や難しい案件を引き受けるか
- 相談できるかどうか…行き詰まったときに早めに助けを求められるか
- フィードバックの受け止め方…改善点の指摘を成長の材料と捉えられるか
- 失敗後の回復…次の挑戦までにかかる時間
エンゲージメントや定着率といった指標は、こうした日々の行動の積み重ねの結果として動きます。企業研修で自己効力感を扱う理由はここにあります。
注意:効果は「課題ごと」に現れる
自己効力感でよく誤解されるのが、「その人の自己効力感が高い/低い」という捉え方です。
自己効力感は課題ごとに異なります。営業では高いが人前での発表では低い、育児では高いが職場では低い——こうしたことが普通に起こります。
そのため、「あの人は自己効力感が低い」と人を評価するのではなく、「どの場面で低いのか」を特定することが出発点になります。対処のしかたが変わるからです。
効果はどこから生まれるのか
自己効力感は生まれつきの性格ではなく、4つの源泉から形成されます。
- 成功体験(マスタリー体験)
- 代理体験
- 言語的説得
- 生理的・情動的状態
つまり効果を得たければ、この4つに働きかければよいということです。それぞれの詳細は次のページで解説しています。
自己効力感の効果を詳しく
よくあるご質問
自己効力感が高いと、具体的に何が変わりますか?
能力そのものが上がるわけではなく、変わるのは行動です。バンデューラは自己効力感が「どの課題を選ぶか」「どれだけ粘るか」「失敗をどう受け止めるか」の3つに影響するとしています。成果や健康状態の差は、この行動の積み重ねを経由して現れます。
自己効力感が高いと成績や能力も上がるのですか?
直接上がるわけではありません。自己効力感は、挑戦的な課題を選び、うまくいかないときに方法を変えて粘る、という行動を通じて結果に影響します。効果は行動を経由して現れると理解するのが正確です。
自己効力感が高い人は、どんな場面でも高いのですか?
いいえ。自己効力感は課題ごとに異なります。営業では高いが人前での発表では低い、といったことが普通に起こります。そのため「あの人は自己効力感が低い」と人を評価するのではなく、どの場面で低いのかを特定することが出発点になります。
仕事の場面では、どのような形で表れますか?
新しい役割や難しい案件を引き受けるか、行き詰まったときに早めに相談できるか、改善点の指摘を成長の材料と捉えられるか、失敗から次の挑戦までにどれだけ時間がかかるか。エンゲージメントや定着率といった指標は、こうした日々の行動の結果として動きます。